MRI検査で何を評価しているのか

MRI検査では、「構造の変化」と「質的な変化」を評価しています。
MRI検査の評価

※図の説明:MRI検査による評価。MRI検査では、「構造の変化」と「質的な変化」を評価している。

 

「構造の変化」とは脳や脊髄などの形態評価ですので、左右対称性の異常・萎縮・欠損・腫大・存在しないものがあるなどを評価しています。これは、X線やCT検査など画像検査と同じです。

「質的な変化」とは、脳や脊髄における浮腫や炎症、存在する脳脊髄液の性状などを評価しています。これは、他の検査と異なるMRI検査の真髄であり特徴です。

「質的な変化」は、MRIの信号強度変化によって評価しています。このために、同じ場所をいくつかの撮影方法で検査を繰り返します。

MRIの代表的な4画像

※図の説明:代表的な4画像。(A)T2強調画像、(B)FLAIR画像、(C)T1強調画像、(D)造影T1強調画像を基本画像として、評価を行う。

 

MRI検査の得手/不得手

MRI検査は先述したように、構造的評価に加えて質的評価の実施が可能です。これらはMRI検査の得意とする点なので、浮腫や炎症の評価、灰白質や白質のコントラストの差による評価、脳の形態的な評価などを行うことが可能となります。

一方で、体動、金属の存在、電波の混入などによって画像の乱れが生じます。これらはMRI検査が不得意とする状況であるため、環境を整備しなければいけません。

このため、全身麻酔下あるいは鎮静による不動化、マイクロチップなどの金属の除去、シールドルームの設置などが必要となります。

また、必要なすべての画像の撮影のためには長時間が必要となるため、スクリーニング的な検査としては不適切です。

骨の評価も不得意としているため、基本的にはMRI検査によって骨に関する診断は行うことができません。

MRI検査とCT検査の相違点

MRI検査とCT検査の比較

※表の説明:MRI検査とCT検査の相違点。

 

代表的な断層撮影検査には、MRI検査とCT検査がよく比較されます。

MRI検査は体の水素イオンに対して磁力を用いて画像を作りますが、CT検査はX線透過率の測定によって画像が作られます。

撮影範囲はMRI検査では狭い一方で、CT検査では広く検査が可能です。脳や脊髄の評価にはMRI検査が適している一方で、CT検査では詳細な評価は困難となります。

出血性病変に関しては、MRI検査では出血の経過を捉えることができ、CT検査ではMRI検査よりも早期に検出が可能となります。

空気の多い領域はMRI検査での評価が困難となり、CT検査では評価が可能となります。腹部は呼吸によって軽度に動く領域ですので、MRI検査よりもCT検査による評価が有用となります。また、先述しましたように、骨の評価はCT検査による評価が有用となります。

神経症状のための精査には、MRI検査が有用です。しかし、急性の外傷に伴う神経症状の場合の骨の評価などには、CT検査が有用となります。

その他、下垂体依存性の副腎皮質機能亢進症の下垂体評価、鼻腔や中耳の評価などにもMRI検査は有用であす。鼻腔や中耳内の病変が脳実質に影響を与えた場合には、同時に脳実質の評価もMRI検査であれば実施可能となります。

MRI検査は万能な検査ではありません!!

MRI検査をすれば、病気の原因がすべてわかるとい万能な検査ではありません。

神経病の診断をする上で、病歴の聴取・一般身体検査・神経学的検査・各種臨床病理学的検査が優先して実施しなければいけません。その後、病気を探る特殊検査の1つとして、MRI検査は位置付けされています。

MRI検査の位置づけ

※図の説明:MRI検査の位置付け。

 

重要なことは、MRI検査は他の検査に優先して実施される検査ではないということです。
MRI検査によってブラックボックスであった脳や脊髄を画像として評価することができるようになりましたが、MRI検査は万能な検査ではありません。

MRI検査でも診断が困難な病気は多くあり、他の検査が有用となる場合もあります。

典型的な病気は「特発性てんかん」です。この病気では脳に機能的な異常を伴っていますが、MRI検査では画像上の異常所見は認められません。また、末梢神経の評価も困難です。これらのことから、MRI検査を検討する場合にはしっかりとした「目的」を持って検査に臨む必要があります。