脳脊髄液ってそもそも何?

脳脊髄液は、物理的および化学的に脳や脊髄を保護していて、栄養の輸送, 老廃物の除去、神経内分泌および神経伝達物質の拡散のための液体として機能しています。大部分は脳室内の脈絡叢から分泌されており、その時間当たりの生産量は犬では0.05ml/分、猫では0.02ml/分とされています。基本的には、脳脊髄液の量や圧は常に一定に保たれています。

脳脊髄液

(図の青色部分が脳脊髄液で満たされている場所)

脳脊髄液検査ってどんな検査?

脳脊髄液検査は、全身性疾患の病態を反映する血液検査と同等の意義を持つ検査です。脳や脊髄の周りに存在しているため、脳や脊髄の病気の診断において欠くことのできない検査の1つです。

★脳脊髄液検査の適応

  1. 脳や脊髄における炎症性疾患

脳脊髄液検査は、炎症性疾患において有用性が高く、診断のためには必須の検査です。また、治療効果の判断に用います。脳脊髄液には病原体や抗体などの炎症に関連した物質も存在していることがありますので、炎症の原因を特定する手掛かりとなる場合もあります。

  1. 脳や脊髄における腫瘍性疾患

脳や脊髄に発生した腫瘍細胞(リンパ腫, 組織球性肉腫, メラノーマなど)が、脳脊髄液中に存在している場合があります。MRI検査では形の変化を評価するだけで腫瘍の特定は困難ですが、脳脊髄液中に腫瘍細胞を特定することができれば、正確な診断ができます。腫瘍細胞が検出できない場合であっても、炎症細胞の増加を伴わない蛋白濃度の上昇が認められる場合もあります。この所見は、腫瘍性疾患の存在以外にも、脳や脊髄の変性・壊死を評価することにも有用です。

  1. 特発性てんかん

特発性てんかんの診断には, 脳腫瘍や脳炎などの病気を除外することが必要です。この目的として、脳脊髄液検査が推奨されています。

★脳脊髄液検査の不適応

    脳脊髄液検査には、採取が禁忌な状況や好ましくない状況があります。

  1. 全身麻酔のリスクが非常に高い場合
  2. 頭蓋内圧の上昇が示唆される場合
  3. 穿刺部位の解剖学的構造上異常が存在している場合
  4. 穿刺部位に感染症が存在する場合
  5. 出血性素因や凝固異常を伴う場合
  6. 脊髄造影検査が実施された後の場合
  7. コルチコステロイドの投与によって, 臨床症状が消失している場合
CSF検査の適応 CSF検査の不適応
  1. 炎症性疾患
  1. 全身麻酔のリスクが高い
  1. 腫瘍性疾患, 変性, 壊死
  1. 頭蓋内圧の上昇が示唆される
  1. 特発性てんかん
  1. 穿刺部位の解剖学的構造上異常が存在している
  1. 穿刺部位に感染症が存在している
  1. 出血性素因や凝固異常を伴う
  1. 脊髄造影検査が実施された後
  1. コルチコステロイドの投与によって, 臨床症状が消失している

脳脊髄液の採取場所

穿刺部位脳脊髄液は大槽穿刺(頭頚移行部)と腰椎穿刺(腰部)によって採取が可能です。脳脊髄液の採取部位は、①病変部分に近いこと、②病変部分よりも尾側が条件となります。

脳脊髄液検査のリスク

脳脊髄液を採取する場合には、必ずMRI検査後に採取することになります。このため、MRI検査で通常よりもリスクが高いと判断される場合には採取を実施いたしません。脳脊髄液の採取によって生命に影響を与える可能性を完全には否定できませんが、検査の有用性とリスクを必ずご家族にご説明の上で実施するようにいたしますのでご安心ください。

 

脳脊髄液検査に関してご不明な点などは遠慮なくお問い合わせください。